口腔乾燥症(ドライマウス)
~それはただの喉の渇きですか?~
●最近こんな症状で悩んでいませんか?
□ 口が渇く(唾液が出ない)
□ 口が渇いて話しづらい
□ パンやビスケットなど乾いた物が食べにくい
□ 舌がひび割れやすく、口角が荒れる
□ 夜なかにのどの渇きで目が覚める
□ 入れ歯で口の中が傷つきやすい
以上の該当項目が1つでもあてはまれば、ドライマウスの可能性があると考えられます。
「ドライマウス」って何?
「口腔乾燥症(ドライマウス)」とは、何らかの原因で唾液の量が減ってしまった状態のことをいいます。
唾液が減ってしまうと、口が渇いて食べたり話したりしづらくなるだけでなく、身体の機能を維持することが困難になってしまいます。
では、なぜ唾液が減少するのでしょう?
唾液が出なくなる、あるいは出にくくなる病気が原因のこともありますが、実際にはストレスや飲んでいる薬の副作用が原因であることの方が多いのです。
ドライマウスの患者さんは、国内では推定で800万人、潜在的には3,000万人いるだろうとも言われています。この数字は、4~5人に1人がその症状を持っている計算になります。
唾液が減ると、なぜ前述のような症状がでるのか、次に唾液の働きについてお話します。
唾液はあなたを守っている!
~唾液は働き者~
唾液は、食べる、飲む、話すといった人間にとって欠かすことのできない機能を営むうえで、重要な役割を果たしています。さらに、抗菌作用、消化作用、粘膜保護作用、中和作用、修復作用など、重要な仕事もしています。
●抗菌作用
口は空気や食物などの入り口で、常に体の外の雑菌にさらされています。そのため、唾液には細菌の増殖を抑える「抗菌作用」があります。それがうまく作用しないと、むし歯や歯周病にかかりやすくなり、さらには口からの細菌感染により、風邪をひきやすくなったり、気管支炎や肺炎を起こすこともあります。
●消化作用
唾液に含まれる酵素により、ごはんやパンなどに含まれるデンプン質を糖に変え、体内に吸収しやすくしてくれます。それにより、胃での消化を助けています。
●粘膜保護作用
唾液には「ムチン」というネバネバしたタンパク質が含まれています。フランスパンやクッキーのような堅い物が接触しても傷つかないように、粘膜をコーティングしています。
●食塊形成作用
食べ物を急いで飲み込もうとして、お茶で流し込もうとして気管の方に入ってむせた経験がありませんか?
水分だけでは食べ物を飲み込みやすい形にまとめることができず、誤嚥してしまうことがあります。唾液の粘り気であるムチンがうまく働くと、食塊がまとまりやすく、きちんと食道の方に流れていきます。
豆知識:
歯が少なくなったり、あわない入れ歯が入っていると、うまく噛めないためにすぐに飲み込んでしまい、噛む回数が減ってしまいます。すると、食べた物と唾液が充分に混ざらず、うまく食塊形成ができないため、誤嚥しやすくなります。
●中和作用
食後にゲップが出て、酸っぱい胃酸を感じたことがありませんか?胃の粘膜は強い酸に対する抵抗性を持っていますが、口や食道の粘膜は中性で、酸に対して強くありません。唾液はその胃酸を中和することが出来ます。そのため、唾液が減ると食道や喉の粘膜を傷めたり、歯を溶かすこともあります。
また、むし歯菌の出す酸も中和できるので、唾液が減るとむし歯にもなりやすくなります。
●修復作用
唾液には、傷を治す上皮成長因子(EGF)や、脳神経の老化を防止する神経成長因子(NGF)などが含まれています。EGFはその作用からアンチエイジング効果があるとして化粧品にも含まれており、動物が傷口をなめるのは、抗菌作用に加え組織修復を促進させるためと考えられています。
NGFは神経の分化、維持に関与しています。海外の研究では、アルツハイマー型認知症の治療への応用も進められています。
口が渇く原因は?
唾液が出にくくなる三大原因は、薬の副作用、ストレス、筋力低下と老化です。その他にも、糖尿病、脳血管障害、シェーグレン症候群などの疾患や、放射線治療が原因となっている場合があります。たいていは、そのいくつかが重なって症状がでています。
唾液が出にくくなる三大原因
●薬の副作用
睡眠薬、精神安定薬(抗不安薬)、抗うつ薬(SSRI)、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン剤など)、風邪薬(消炎酵素剤など)、花粉症の薬などはドライマウスを引き起こします。また、胃酸を抑える胃薬、頻尿を抑える抗コリン薬、降圧剤、骨粗鬆症に対する薬、抗がん剤や免疫抑制剤にもドライマウスを引き起こすものがあります。
ただし、ご自身の判断で治療薬を飲むのを止めないでください。ドライマウスよりも病気の治療を優先しなければならない場合があるからです。必ず主治医と相談したうえで、薬の減量もしくは薬の変更をしてもらうようにしましょう。
●ストレス
人はストレスを感じると、口や喉に渇きを覚えます。人前で話をする人の為に水差しが用意されるのはそのためです。
唾液を分必する唾液腺は「自律神経」に支配されています。緊張すると交感神経が優位になり、サラサラとした唾液の分泌を止め、ネバネバとした唾液を少量分泌します。そのため、口の中が粘(ねば)つき、のどの渇きを感じてしまいます。
●筋力低下と老化
老化も唾液分泌を低下させるとされており、「最近、口の中が渇くわ」とカバンの中に飴玉を入れられている方もいるのでは?
老化による唾液の減少は、老化による唾液腺の萎縮ではなく、唾液腺の周囲の筋肉の筋力低下により引き起こされていると考えられています。しっかり噛んで食べるなどして、筋力低下を予防すれば、唾液は出てきます。
また、就寝時に筋力が低下した舌が重力により喉のほうに下がると、舌が気道をふさいでしまうために口呼吸になり、口腔乾燥を引き起こします。
ドライマウスへの対応法
口の中が渇いてつらいけど、「どの病院に行ったらよいかわからない」、「どの科に診てもらったらいいかわからない」というのを耳にします。
まずは歯科を受診してください。
ご自身での対応としては、うがいを頻繁に行うのもよいです。ただし、市販のうがい薬はアルコールを含むものが多いため、逆にドライマウスを助長させる事があるので注意してください。当医院では、保湿剤を配合した洗口液、ジェル、スプレーなどを取り扱っておりますので、ご相談ください。