妊娠中の歯科治療

妊娠中はエストロゲン（女性ホルモン）の増加や内分泌の変調により歯肉が赤くなり、腫れやすくなります。
ときに歯肉から出血することもあります。

歯肉炎の症状が進行すると、お口の中に増殖性の腫瘤が出来ることがあります。大きさは2～数cmで、妊娠3ヶ月頃から発症して、出血しやすくなります。

妊娠すると、
①口の中の唾液が酸性になり、粘（ねば）っこくなる。
②つわりなどで食事の回数が増えたり、歯磨きができず、口の中が汚れやすくなる。
などの理由で、むし歯になる危険性が増加します。

これらの症状はいずれも、口腔内の清掃・プラークコントロールによって十分予防できます。バランスの良い食事を摂り、つねにお口の中を清潔にしておきましょう。

妊娠すると内分泌の変調や、ビタミン代謝の障害などにより、栄養障害が起きやすくなります。それによって、お口の中に障害が発生したり、胎児の歯の形成にも影響を及ぼす可能性もあるので、つねにバランスのよい食事を心がけましょう。

妊娠中はビタミンA、B、C、Dが不足しがちです。とくにビタミンBの不足は、歯周組織に悪影響を与え、歯肉炎を悪化させてしまいます。妊娠初期には胎児の歯の形成も始まるので、たんぱく質、リン、ビタミンA、Dなどが大切になります。

歯や歯肉の病気は、最初のうちはあまり気がつかないものです。とくに、妊娠中はお口の中の健康が悪化しやすいので、妊娠したら早期に歯科医院で健康のチェックをおすすめします。

まず、必ず妊娠していることを伝えた上で診察を受けましょう。その際に、妊娠週数、出産予定日を教えてください。
妊娠中の治療で最適な期間は、妊娠4～7ヶ月のいわゆる安定期の間です。

妊娠中はできるだけ避けます。ただ、治療上どうしても必要な場合、妊娠4ヶ月以降の安定期にプロテクター（防護衣）を使用し、安全性を確保したうえで撮影することがあります。

レントゲン撮影と同じように、できるだけ避けます。

●抗生物質

妊娠8週以内は、胎児奇型の発生に影響するため避けた方がよいです。
比較的安全な抗菌剤の「ペニシリン系」、「セフェム系」、「マクロライド系」でも、常用量で4～5日までの服用とします。

●鎮痛剤

動脈管収縮作用の強い薬剤は避けます。比較的安全な鎮痛剤でも、頓服として1日に1～2回までの服用がより安全です。

Ｑ１．親知らずが痛みだしたのですが

Ａ１．まず、歯科医院で診察を受けましょう。
出産が終わるまで延期できるようであれば応急処置にとどめますが、抜歯が必要であれば安定期（4ヶ月末～7ヶ月）に処置することがあります。
できれば、妊娠前に歯科検診を受け、必要な処置を済ませておきましょう。

Ｑ２．麻酔は大丈夫ですか？

Ａ２．必要最少量の使用にとどめるのはもちろんですが、通常の歯科治療で使用する量は問題ありません。

Ｑ３．治療で仰向けになると苦しいのですが・・・

Ａ３．妊娠末期には仰向けの姿勢を長く続けると、子宮が下大静脈を圧迫するため血圧が低下することがあります。
身体を左に傾向けることで和らぎますが、治療の際は水平位ではなく、少し起こした状態で行います。

Ｑ４．授乳中なのですが、薬や麻酔は大丈夫ですか？

Ａ４．ほとんどの薬剤は、服用後約2時間をピークに血中（母乳にもわずかに）に移行します。その後、5～6時間後にはその半分以下にまで急速に減少します。生後3ヶ月くらいまでの赤ちゃんは代謝機能が未熟で、授乳も2、3時間おきと頻回なため、妊娠中と同様の対応が望ましいとされています。
3ヶ月を過ぎると、お子様の代謝機能もしっかりとしてきます。なるべく薬剤を投与しないことが望ましいのですが、歯科の薬剤の母乳への影響は、常用量で短期間なら問題ないと考えられています。
また、麻酔についても同様で、一般的に麻酔薬が完全に排出されるのには約6時間程度かかると言われています。しかし、歯科治療で使用する量は少量のため、ほとんど問題ありません。
それでも気になる場合は、麻酔が必要な治療前や薬の服用前に授乳してください。次の授乳の際は、あらかじめ搾乳しておくか、可能であれば一時的に粉ミルクなどに変えるとよいでしょう。